7月8日(月)に宅地建物取引業務の基本的な留意点について、新規免許取得者研修会の研修を受講しました。
そこで学んだことは
①媒介業者の義務
媒介業者(不動産業者)には委託者の希望・意向等を極力反映させて制約に至るべく尽力する義務がある。
具体的には、大会契約書の交付・制約努力義務・調査義務・重要事項説明義務・重要な事項の不告知・不実事項の告知禁止・守秘義務・信義誠実義務・善管注意義務を負う。
②不動産取引は個別性が強いため、媒介業者の責任範囲を一般的に画策することが困難であるが、紛争を未然に防止するためには、個々の取引において、媒介業者として何をどこまで調査し説明すべきかを明確に把握し、これらを十分に取引関係者に認識させることが重要である。
③宅地建物取引士の名称変更、中古受託流通の仕組みの充実と円滑化の促進等を背景に、宅地建物取引業の従業者に対する社会的要請は強くなっており、顧客の視点に立った業務の透明化、サービスの提供に努める必要があり、顧客に提供する情報の正確性、網羅性とともに、顧客の理解が得られるまでの徹底した説明が求められる。
【事例1】
ー宅地建物取引士証の更新手続きをせず重要事項説明した事案ー
ー事案ー
媒介業者の宅地建物取引士が、買主に重要事項説明を行う前日になって初めて宅建士の更新手続きを忘れていることに気付いたが、上司に相談すると怒られると考え、翌日そのまま重要事項説明を行いました。
ー結果ー
買主が宅建士の有効期限が切れていることに気付き、買主から「大事な不動産取引なのに、それって大丈夫のなのか?運転免許証だとダメだと思うが、それと違うのか?」
と疑問があり、買主が県の宅建業指導課に相談し、媒介業者として県から行政処分を受けた。
【事例2】
ー担当者が個人的に買いたい業者を買主に紹介した事案ー
ー事案ー
媒介業者の担当者が、古家付き土地の買主から、建物の解体業者の紹介依頼を受けた。買主は古家を取り壊して更地にして新築戸建を建てるつもりでした。担当者は個人の判断で知り合いの解体業者を紹介しました。
1年後、買主が満を辞して新築住宅をの建設に着工したところ、取り壊した建物の残材が地中に埋められていることが判明しました。
しかし解体業者は倒産し、媒介業者の当時の担当者も退職していたので、媒介業者が解体業者を紹介したものだとして、媒介業者に損害賠償を請求した。
ー結果ー
宅地建物取引業者として、紹介された買いたい業者を把握していなかったことが問題である。外部の各種業者を紹介する場合は、必ず紹介先の業者との間で業務委託契約を締結するなど、担当者の個人的裁量での業者紹介は禁止するべきである。
担当者が個人的裁量で業者紹介する場合は、不要な費用が発生している可能性がある。
中古住宅の流通促進、再活用の流れから、解体業者、リフォーム業者、建物状況調査者、引越業者等の関連事業者の紹介機会が増えると考えられるが、関連業者との不適切な関係は、顧客第一主義のコンプライアンスから、徹底して撲滅すべきものである。
【事例3】
ー住宅ローン借入申し込み時の団体信用生命保険の不告知誘導ー
ー事案ー
中古住宅売買の媒介業者の担当者は、買主の住宅ローンの借入申し込み手続きを手伝った際に、買主からある病歴を聞いた。担当者は「その病歴があると団体信用生命保険が通らず住宅ローンが不承認になり、せっかくまとめた売買契約がダメになる。今月の成績の査定に響く」と考え、買主に「その病歴は告知しない方がいいですよ」と不告知誘導を行った。
気になった買主が、後日銀行に「病歴があるが大丈夫か」と確認したところ、団体信用生命保険が担保できず住宅ローンが不承認となった。さらに売買契約書にローン特約が入っていなかったため、飼い主はローンを解除ができず、結果、契約を解除され違約金を支払う事態となった。
ー結果ー
トラブルの原因は、担当者の契約優先主義だ。
「団体信用生命保険への病歴告知でローンが不可になると、まとまった売買契約が不成立になり営業成績に営業が出る」という、担当者の契約優先主義による不適切な行為である。
団体信用生命保険の告知に関し媒介業者に権限は一切なく、不告知誘導などは責任問題に発展する。
また、ローン特約の設定漏れも問題である。
買主がローンを利用することを認識していて、ローン特約を設けない契約書を作成し、その結果買主に損害が生じたものとして損害賠償の対象になる可能性がある。
【事例4】
ー購入したマンションの上階の騒音問題ー
ー事案ー
中古マンション売買の媒介業者の担当者は、買主から「家で仕事をするので静かな環境のマンションを紹介して欲しい」と依頼を受け、所有していた物件を紹介した。
周辺環境も良いため買主は好印象で、「このマンションなら大丈夫だろうね」と、買主が気に入ったので、気が変わらないうちに契約に持って行こうと考え、担当者は具体的に確認せず契約を締結し引き渡しを完了した。
しかし、その後買主が入居したところ、上階からの騒音が激しく我慢ができず、「静かな物件をと言っていたのに、これでは購入目的に合わない」とトラブルになった。
相続で取得した売主は居住したことがなく、騒音等については認識していなかった。
ー結果ー
担当者は契約締結優先のあまり、上階からの騒音の有無について調査せず、不確実なことを確実なように明言したことが問題となった。一般的には媒介業者は周辺環境全てを調査する義務はないが、買主から特に購入目的や動機を告げられているような場合は、より慎重に調査し説明するべきである。
音や振動、臭気等の感じ方は主観的であるため、「静かな環境」の基準も曖昧である。主観的価値判断に関わることや調査しきれないことについては、依頼のあった時点で、価値判断はできないことや調査しきれないことを説明し、さまざまなシチュエーションを変えて購入希望者自身に確認してもらってから、判断してもらうべきである。
【事例5】
ー空き家の売主から預かっている鍵を無断で他業者に貸与ー
ー事案ー
空き家の売主から売却依頼を受けている媒介業者が、他業者から物件案内の依頼があった際に、都合で同行できないため、売主から預かっている鍵をその業者に預けて単独で案内をしてもらった。
その業者が現地案内している時に、たまたま建物の風通しに来た売主と居合わせてしまい、依頼をしていない他業者が物件に立ち入っていること、依頼した媒介御すやが無断で鍵を貸し出しし同行していないこと、鍵の貸し出しの承諾をとっていなかったことについて、媒介業者として信頼できないとクレームを申し立てた。
ー結果ー
所有者からすると、大切な資産を預けていたのに、粗末に扱われているような気がした。という売主の信頼を裏切る行為であった。
鍵の貸し出しは原則禁止とし、どうしても貸し出す場合は貸出ルールを整備し、依頼者の事前了解を得るなどの対応が必要である。
このような事例があるということで、学ぶことが出来ました。
最後の鍵の貸出については、実際にはよくあることですが、売主様には事前にこのようなことがあることを説明する必要があると再認識しました。
正直不動産の学びの現場からは以上でーす!